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無熱性痙攣では血中カルシウムも確認を >副甲状腺機能低下症の鑑別
解説

 反復する熱を伴わない痙攣をみた時に、我々小児科医はまずてんかんを疑います。
それは頻度からみても正しいことなのですが、うっかりすると低血糖や低カルシウム
血症に伴う痙攣を見落としてしまう場合があります。

痙攣を主訴に熱のない児が搬送されてきた場合は、ぜひ一緒に血中カルシウム
(と血中リン)を測定しておきましょう。
当然のことながらAHO(Albright hereditary osteodystrophy;肥満、丸顔
短頚、短指、第4中手骨短縮など)、皮膚の石灰化皮腫、CT上の脳基底核石灰化
などを認めた場合は偽性副甲状腺機能低下症Ia型を疑う必要があります。

AHOを伴わない場合はIb型ないしII型を疑いますが、II型は頻度が少ないです。

新生児バセドウは数日間は悪化に注意 >抗甲状腺剤は抗体より早く消失
解説

 抗甲状腺剤によって良好なコントロールを得ているバセドウ病母胎より生まれた赤ちゃんは
最初は症状を出すことは少ないです。しかし、胎盤はTSHや甲状腺ホルモンは
通しにくいですが、抗甲状腺剤と甲状腺自己抗体はよく通しますので、症状が
なくとも、これらが赤ちゃんに移行している場合があります。

すると、薬のほうが半減期が短く5日から10日もすれば効果が切れてきますので、
残った自己抗体の働きによってその頃より新生児バセドウ病を発症してくるのです。

一方、手術や放射性ヨードによって甲状腺をつぶしてしまった母親から生まれた
赤ちゃんは、山のように自己抗体を浴びて生まれてくることもありえます。
この場合は生直後より重篤な症状を出す可能性が高いので、より注意が必要です。

GH欠損は成長が栄養より主にGHに依存する4〜5歳頃に見つかりやすい
解説

 重症型GH欠損症があっても、栄養が十分足りている場合には乳幼児期の身長は
それなりに増加する場合が多く、幼児期後半になってくると栄養よりも
身長増加のGH依存度がより強くなるため、この時期に発見されやすくなります。

 さらに思春期になりますと、GHだけでなく性ステロイド依存性の身長増加
が加わってきますので、思春期遅発症や性腺機能低下症があると、軽度のGH
欠損であっても、より身長増加不良が目立ってくるようになります。

ただし、最も重い型のGH欠損では、新生児期に低血糖で発症する場合があります
ので、その場合は早期よりGH補充が必要となります。

ターナー、プラダー・ウィリー、軟骨無形成、腎不全はGH公費負担有り
解説

 通常、GH欠損症(成長ホルモン分泌不全性低身長症)に対して行われるGH補充は
生理的な補充量が投与されます。
しかし、GHを大量に(薬理学的治療量)投与した場合、最終身長が改善することが
報告されている一連の疾患では、それよりも多い量のGHが投与されます。

これらの疾患では成長ホルモン分泌不全性低身長症同様に小児慢性特定疾患
研究助成制度による公費負担を受けることができます。
対象となるのは、低身長を伴うターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群、
軟骨無形成症、慢性腎不全です。

FISHでPrader-Willi症候群の診断がつかない時はメチレーションテスト
解説

 Prader-Willi症候群の原因は父由来15q11-q13領域の「欠失」が75%、母親から
2つのalleleを受け取り父親から受け取らなかった「母性片親性ダイソミー」が23%、
父親由来のalleleがあたかも母親由来のalleleのように振る舞う「刷り込み変異」が
2%程度とされています。

このうち欠失は、染色体高精度分染法やFISH法により診断可能ですが、
のこりのふたつは「メチル化特異PCR法(メチレーションテスト)」を用いないと
診断をつけることができません。

再発率はインプリンティング異常(刷り込み変異)のみ0〜50%で、残りの「欠失」
と「片親性ダイソミー」は1%未満です。
一般にPWSは親から子へ遺伝する心配はあまりない病気といえるでしょう。

尚、15q11-q13領域に切断点のある均衡転座は、Gバンドでも診断できますが、
頻度は大変少なく1%未満ですので、あまり考慮する必要性は高くありません。


小児内分泌疾患の評価には成長曲線が不可欠と言っても過言ではない
解説

 1型糖尿病 >急な体重減少
 2型糖尿病 >肥満傾向のある児の身長増加不良と体重増加不良
 バセドウ病 >急な体重減少
 橋本病(機能低下) >体重増加不良
 クレチン症 >体重増加不良
 クッシング病 >身長増加不良、体重増加促進
 思春期早発症 >身長増加促進
 体質性思春期遅発症 >成長曲線に沿った身長増加のある低身長
 下垂体腫瘍 >それまで順調だった身長増加が急に横ばいになる
 神経性食思不振症 >身長増加不良、体重減少

・・・他にもあります。探してみて下さい。
長い目で見て成長を評価する、そこから小児内分泌疾患の鑑別が始まります。

糖尿病性ケトアシドーシスでは、急激な血糖補正による脳浮腫に注意
解説

 歩いて病院へやってきた初発DKA患児が、アシドーシス自体で命を落とす
ことは非常にまれです。しかし、急激な血糖補正、アシドーシス補正を行い
脳浮腫をきたした結果、後遺症を残したり命を落としたりすることがあると
報告されており、こちらの方は注意していないといつそうなるかわかりません。

DKA治療の最重要点は「いかに早く血糖を下げるか」ではなく「いかに
安全に血糖を下げるか」にあります。
血糖降下速度は1時間あたり100mg/dl以下にするよう推奨されています。

甲状腺画像診断のファーストチョイスはクレチンもバセドウも超音波
解説

 123I甲状腺シンチグラムは形態と機能の両方を評価するのに適していますが
カプセルが飲める年齢にならないと検査できません。
超音波検査はCTのように被曝することもなく、MRIのように鎮静が難しい
わけでもないので、どのような年齢、どのような主訴においても甲状腺の
形態評価の第一選択となりえます。

カプセルが飲み込める年齢になれば甲状腺シンチを行うことが可能
解説

 だいたい小学校に上がるくらいの年齢になればシンチが可能になります。
クレチン症の再評価の時は、まず半減期の短いチロナミン(チラーヂンSの4分の1
程度の量)で4週間ほど置き換え、その後10日程度のヨード制限と休薬期間をおき
シンチを行います。被曝量を考慮し131Iシンチではなく123Iシンチを行います。

シンチもしくはエコーで異常が認められた場合は、成人年齢まで内服を続けます。

低身長におけるGH欠損の頻度は極めて低く、大多数は特発性である
解説

 いわゆる「本物」(=重症型成長ホルモン分泌不全性低身長症)は、治療されている
症例の中でもほんの一握りです。

一方で脳腫瘍の術後や放射線療法後にGH欠損となることがありますが
これはそのような治療を受ければかなり高率に発症しますので、
「続発性」に関してはまぎれこみ例は少ないと考えてよいでしょう。

-2SD程度を成長曲線に沿って身長が伸びる場合は器質的疾患は多くない
解説

 上でも述べましたが、本物のGH欠損症の場合は4〜5歳ごろより、身長増加不良
がどんどん明かになっていきますので、身長SDスコアも引き離されていく場合が
多いようです。

 一方、体質性思春期遅発症のような場合には−2SDラインの少し下をぴったりと
よりそうように伸びていき、少し遅めの思春期をむかえて、そこそこの最終身長まで
なんとかたどりつく、あるいは場合によっては平均値近くまで伸びるような場合もあります。

 従って、SDスコアがどんどん離されていくような場合には、早めにGH分泌負荷
試験をすすめたほうがよいでしょう。

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